それでは、本日のSDGs道場を始めます。
「礼!」(よろしくお願いいたします!)
ということで、本日も始まりましたSDGs道場。本日は、「アメリカ大学院が注目するビジネスモデル」についてお伝えいたします!
先日、私の目の前に、「二度見」してしまうほど素敵な鞄が現れました!正確には、エスカレーターに乗った時に、たまたま前に乗った人の鞄が私の目の高さと一緒になっただけなのですが…。
突然、目の前にすっごく魅力的な鞄が現れて、私は思わず、「二度見」してしまいました。
「え?何この鞄。すごく素敵!」
「布地なのに全く型崩れがない!新品?」
「縫い目がすごくきれい…高そう!」
「こんな鞄持ってる人、どんな人だろう?」
…と、声にこそ出しませんでしたが、エスカレーターに乗っている間、興奮しきりでした。
「一体、こんな素敵な鞄を作っているのは、どこの会社なのか?」
気になってしょうがなくなり、(人様の鞄にも関わらず)ジロジロ見ていたら、見つけました、メーカーのタグを!そこには、こんな文字が…
京都市東山知恩院前上ル 一澤帆布製
「???」
見たことも聞いたこともない名前だったので、早速、検索開始。調べてみると、非常に有名な鞄であることがわかりました。
まず、「一澤帆布製」というタグは、
「株式会社一澤信三郎帆布」
という会社がつくった鞄のタグだと判明。(ちなみにタグは3種類ありました。)
一澤信三郎帆布は、1905年、京都市に「一澤帆布」として創業。
船の帆にも使われる丈夫な帆布(はんぷ)を使った道具袋でスタートしました。
その後も、丈夫で長持ちする一澤製の鞄は人気で、戦中・戦後は物資の運搬や食料の買出し用として。1960年代の登山ブームの際には、
キスリングで人気となっています。
途中、兄弟間の相続争いがありましたが、最終的に弟の信三郎氏が勝訴。
「一澤信三郎帆布」
を立ち上げ、現在は信三郎氏が4代目として、経営を行っています。そんな一澤信三郎帆布、その強みは何と言っても
硬い帆布を正確に縫い上げる職人の技術力
この会社で働く職人は70人。帆布は厚手で硬いため、木槌でつかないと折り目がつかず、鞄にするには熟練の技が必要です。
裁断、縫製に至るまで、すべてが職人の手作業。ひとつひとつ、見えないところまで手間暇かけてつくっていて、それが、丈夫で長持ちする鞄に繋がっています。
週末になると、お店にはお客さんがごった返すほど人気で、国内だけでなく海外からもお客さんがくるとのこと。
なんと、2014年にはイギリスの某有名グローバル情報誌の「旅行のベスト50アイテム」特集で、「ベストトラベルバッグ」 に選ばれているんです。鞄と言えば、海外有名ブランドに目が行きがちですが、海外で日本の鞄が選ばれるなんて、すごいですよね!
国内だけでなく、海外でも評価が高い一澤新三郎帆布の鞄。そんな中、信三郎社長が貫いているビジネスモデルがあります。それは、
販売店舗は京都の一店舗のみ。ネット通販はやらずに製造直販!
普通、これだけ海外での評価が高まったら、海外展開したり、ネット販売をしたりして、売上拡大に舵を切りたくなりませんか?
でも信三郎社長は、海外展開どころか、国内でも多店舗展開をしません。
なんでだろう…?と思い、色々調べていたら、ある番組で社長はこうおっしゃっていました。
「できるだけいい素材を使って、無駄は省かなければいけないが、手間暇かけた仕事をしようと思ったら、今の形態が一番ベスト」
「目に見えないところに手間暇を掛けた方が、長持ちするし、飽きが来ないものに繋がっていく。」
「生産者と消費者、作り手と使い手ができるだけ近いに越したことはない。」
…と。つまり、
流通経費をカットし、その分、付加価値の高い鞄をつくる
という考え方です。なるほど!そういうことか!…と思ったのですが、単にそれだけではないような気がします。私はあえて、
「ここでしか買えない」希少性戦略
で勝負しているのではないかと思いました。
鞄を買うときにのお客様の気持ちには、段階があると思います。
まず、鞄を探し始めるときは、
「今持っている鞄が壊れたから新しいのが欲しい」
「荷物が多くなってきたのでいっぱい入る鞄が欲しい」
「PCが持ち運べる鞄が欲しい」
など、主に機能面を重視します。
でも、いざ買うときになると、鞄を持ったときに鏡に映る自分をチェックして、「この鞄持ってたら会社の人に
『どこで買ったの?』って聞かれるかも?」
「友達に『カッコイイ鞄!』て言われるかも?」
「『こだわりある人』みたいに見られるかも?」
など、本能的な直感で最終的に購入を決めます。
一澤信三郎帆布の鞄は、京都のお店に行かないと買えない。だから希少性が高くて、持っているだけで
他の人とはちょっと違うこだわりのある人
というポジションが取れる。
そういうお客様のニーズを理解して、戦略的に一店舗のみでの販売を継続する戦略をとっているのではないかな?と思いました。
毎年春になると、アメリカで経営学を学ぶ大学院生たちが、一澤信三郎帆布を訪れるそうです。最先端のビジネスエリートを目指す彼らが、この会社の経営に着目し、毎年視察に訪れているとのこと。
そこで、大学院で学ぶ内容とは真逆のビジネスモデルに、戸惑いながら、非常に興味をもつようです。
拡大しなくても成功できる
という好例である一澤新三郎帆布のビジネスモデル。
「時代遅れと時代の先取りの両面がある」と、この視察を企画している教授は言います。
「ここでしか買えない」希少性戦略で、拡大せずに成功する
これからの時代に中小企業が生き残るSDGs経営として、抑えておくべきビジネスモデルだと思い、本日ご紹介させていただきました。
100年続くビジネスモデル:
https://www.ichizawa.co.jp/
それでは、本日のSDGs道場を終わります。
「礼!」
読んでいただき、ありがとうございました!
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