なぜ、今SDGsなのか?


■まずは、2030年に行ってみよう!


あなたは、2030年の世界がどうなっているか、考えたことはありますか?「2030年未来予想」だとか、「2030年世界地図」だとか、様々な著名人が書籍を出して未来を予想していますので、何となくイメージをつかんでいる人もいるのではないかと思います。

 

突然ですが、今から10年後の2030年の日本にタイムスリップしてみましょう。

 

現在>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>2030

 

5Gが運用開始となり、通信速度が劇的に早まってます。それにより日常生活がオンラインと繋がっています。離れていても、映像によりすぐそこにいるかのようなリアリティをもって、映像を見ることができるようになっています。海外留学した子供がすぐ目の前にいるかのように話ができています。

 

働き方も変りました。テレワークが進み、自宅で仕事をする人が増え、電車の混雑もだいぶ緩和されています。兼業・副業も当たり前。大企業に勤める人が減り、今やフリーランス労働者の約半分を占めています。都会に住む人が減り、地方にいながら都会の企業に勤める人が増えています。が一般的な選択肢になっており、若者も女性も障害者も、みんな何度失敗してもまたチャレンジできて、自己実現できる環境整っています。

 

同時通訳可能なAIの登場で言葉の壁がなくなってます。外国語が話せなくても機械を用いればいろんな国の人と難なくコミュ二ケーションできます。AIによる専門職の代替も始まります。これまであった職業が多くなくなっています。そのかわり、新しい職業が次々に生まれています。人間にしかできないクリエイティブな仕事に就く人が増えています。

 

車はガソリン車よりも電気自動車が主流となり、更に無人自動運転サービスが展開し、自動で運転される電気自動車に乗って人々が移動するようになります。その車も「シェア」された車です。家も車も洋服も鞄も、自分のものは最小限になり、その他のものは必要なときに他の人と「シェア」するという考え方が主流になっています。

 

現在<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<2030

 

…ということで、おそらくこの先10年で、私たちが考えている以上に、これからの世の中は激しく変化します。まさに「明治維新に匹敵するほどの変化」を迎えると言われています。

 

そんな中、変化の激しい世の中において、私たちは何を目指してどこに向かって進んでいけばいいのか、わからなくなりますよね。でも、その道しるべがあるんです。

 

それが「SDGs」です。



■SDGsとは?


 SDGs(エスディージーズ)は、「Sustinable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月にニューヨークの国連本部で行われた「国連サミット」で採択された、2016年から2030年までの国際目標です。SDGsでは、地球規模の問題を解決するために、「誰ひとり取り残さない」という共通理念のもと、17の目標とそれを達成するための169のターゲットを設定しています。

 

これだけ見ると「へ~そうなんだ~」で終わってしまうかもしれませんが、SDGsのすごいところは、「国連の193の全ての加盟国がこの目標に合意している」というところなんです!

 

実は、SDGsは3年かけて世界中の政府・国連・市民社会・企業・研究者・女性・若者などさまざまな人達が協議を重ね、世界から1,000万人もの人々がオンライン調査を通じて意見を出し合った上で成立した目標です。なので、一部の有識者や政治家だけで作った目標ではありません、言わば「みんなつくった目標」なんです!現場の声が反映された目標だからこそ、みんなが納得し進めていける目標ができた、ということなんです。

 

SDGsは「2030年の世界のあるべき姿を現した目標」であり、非常に牽引力がある目標と言えます。17の目標に無縁な人は地球上に誰ひとりいません。これらの問題を「自分ごと」として考えて、行動することが私たち一人ひとりに求められています。


■そもそも「持続可能な開発」って何?


SDGsは「持続可能な開発」と訳されますが、そもそも「持続可能な開発」とはどういうものなのでしょうか?国連では、「将来世代のニーズにこたえる能力を損ねることなく、現在の世代のニーズを満たす開発」と定義しています。

 

つまり、自分達だけでなく、子や孫、その先の世代も幸せに暮らせるような開発をする、ということです。

 

では、具体的にはどうすればいいか?「持続的な開発」には、3つの要素の調和が重要だと言われています。

 

①経済開発(Economic Deveropment)

②環境保護(Environmental Protection)

③社会的包摂(Social Inclusion)

 

①経済開発、②環境保護は、なんとなく理解できるものの、③社会的包摂(ほうせつ)というの言葉はちょっと聞きなれないですよね…。

 

社会的包摂とは、子供や障害を持つ人、お年寄りなど、社会的に弱い立場の人全員が、それぞれ自分の個性を活かして活躍できている状態のことです。つまり、誰一人仲間外れにされることなく社会でイキイキと生きられる状態、ということです。

 

もし、これまでのように経済成長ばかりを重視していった場合、環境破壊が進み人間が生活できる環境が蝕まれ、結局は経済発展どころではなくなります。一方で、環境保護ばかりに重きをおくと、最終的には人間がいない方が地球にとってはいい、という結論になります。

 

AIが登場し、マニュアルに落とし込めることは何でも機械にとって代わられる時代になります。私たち人間に残されたことは「新しい発想」を生み出すことです。そのためには、無限の可能性を秘めた子供達、多様な個性・感性を持つ障碍者・性的マイノリティの方々、人生経験が豊富な高齢者など、それぞれが個性を活かして活躍できる社会をつくることで「新しい発想」が生まれてくるのです。その新しい発想がこれまでにない商品・サービスに繋がり、経済の発展に繋がります。また、社会的に弱い立場、制約がある立場の方がイキイキと働ける環境が整うことで、全員にとって働きやすい環境になることは間違いありません。

 

環境保護と経済成長の両立を図りながら、全ての人がそれぞれの個性を活かして活躍できる社会。この社会が実現できて初めて「持続的な開発」が実現できるのです。



■SDGsが生まれた背景


SDGsのもとになったのが、2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された、MDGs(Millennium Development Goals:ミレニアム開発目標)です。

 

MDGsは、2015年までという期限付きの8つの目標と21のターゲットを掲げました。ですが、その目標が先進国主導で途上国に対して設定された目標ばかりであり、途上国の意向が反映されていない、という問題点が指摘されていました。また、一定の成果は上げたものの、途上国の一部地域で「絶対的貧困」の問題が残ってしまったり、先進国の中でも「相対的貧困」という、格差社会の中で貧困に陥ってしまった人も増えたことがわかりました。

 

その反省を踏まえ、国連全加盟国で交渉し、途上国だけでなく先進国を含めたすべての国々に対して目標を設定したのがSDGsです。

豊かさを追求しながら地球環境、人権を守ることに重きが置かれており、目標も8から17に増えたことで包括的かつ互いに関連しあった目標となっています。


■なぜ、今SDGsなのか?


環境問題について、これまでも対策の必要性は声高く言われてきました。

 

1992年には地球サミット(環境と開発に関する国際会議)が開催され、そこで気候変動枠組条約等への署名が開始されました。日本にはこれまでも、水俣病などの公害問題に対応してきた歴史があり「環境先進国」と言われいましたが、1990年代からは日本でも環境問題が地球規模の問題として認識されるようになってきました。

 

そんな中で、企業にも環境を保護する取組が求められるようになり、企業はCSR(企業の社会的責任:Corporate  Social Responsibility)として環境対策を行う企業が出てきました。しかし、当時は本業で生まれた利益を持ち出して、環境対策に一部利益を使う、という形でした。なので、環境対策はどこか、「意識高い人が取り組むこと」「余裕がある企業がイメージアップのために取り組むこと」という、そんな「他人ごと感」がありました。

 

でも、現在は違います。毎年毎年、夏になると猛暑が続きます。冬はおかしなくらい温かく、これまでにない感染症が猛威を振るいます。私たちは、「いよいよ地球がおかしくなってきている」ということに気づき始めました。「自分達さえよければいい」では、結果的に自らの首を絞めることになる、ということに消費者側も気づき始めています

 

「プラネタリーバウンダリー(地球の限界)」という言葉をご存知でしょうか?これは、地球環境に関して、地球で人類が活動できる範囲を科学的に定義し、定量化して示したものです(下図参照)。これを見ると、地球はすでにいくつかの点で限界に達しています。私たちの生活は、科学的にも限界にきているということが示されています。

 

そこで出てきたのが「SDGs」です。SDGsはCSRとは異なり、「本業によって社会課題の解決に取組む」というものです。SDGsに向かって、世界中で取組が始まっており、投資も集まってきています。消費者の意識も大きく変化しています。

 

これほどまでに、地球の危機が世界で共有されている時代はありません。だからこそ、「今、SDGs」なのです。